競馬と借金とおじいちゃん

俺の上司はこの老人ホームでの勤務が長く、入居者のことを誰よりもよく知っている。

何がすごいって、長いから知っているというレベルではない。

新しい入居者の情報を最初に仕入れてくるのはほぼ間違いなくその上司なのだ。

あの人の情報収集力は一体どうなっているんだ?誰もあの人には逆らえないだろうな・・・。

 

そんな上司から、面白そうな情報を手に入れた。

どうやら、新しく2階に入居したおじいちゃんがなかなかにハチャメチャ人生を送っていたらしい。

 

そんな話を聞いたもんだから、その人の風呂の介助に立候補した。

こんな感じで俺はすぐ上司に乗せられる。自分で言うのもあれだが、なかなかの名コンビだと思う。

 

どんな話なのかとウキウキしながら入浴介助へ。おじいちゃんの見た目は噂とは真逆の、真面目なおじいちゃんを画像検索したらトップに出てきそうな感じだった。

 

とっつきにくいタイプなのかな、と第一印象を受けたものの、ひと声かけてみるとなかなかに饒舌である。

これは当たりだ!と思ったのはここだけのお話であるが。

 

「○○さんのお話ってすごい面白いらしいじゃないですか。」

魔法の言葉発動である。おじいちゃんの口元がニヤッとなった。

 

おじいちゃんが話し始めた。おじいちゃんは真面目そうな風貌に似合わず、ギャンブル三昧だったらしい。

 

しかも賭け方が大胆で、いつもこいつだ!と決めた馬に単勝で1点買い。よく言えば男らしい買い方だが、まあ・・・ダメ男の買い方だよな。それを毎週末やっていたらしい。

当然ながら負けまくるから、お金が足りなくなる。だから借金もたくさんしたらしい。いくら借りたかなんて覚えていない。おいおい・・・

 

今ではあり得ない話だが、昔はある程度なーなーで貸し借りを行っていた業者もいたらしい。本当かよ?笑

 

そして、このおじいちゃんから聞いて初めて知ったのだが、借金には時効があるらしい。

おじいちゃんはこの手を使ってかなりの額の借金を回避してきたとのこと。だから情報を集めてはゆるゆるな消費者金融を狙っては、借金を合法的に踏み倒してきたとのこと。

そういう所での頭の切れを競馬の予想に充てればよかったのに。

 

その内容を思い出そうとしていたら、話の内容とほぼ同じサイトを見つけた。

 

借金の時効に関するサイトはここ!

 

今回老人ホームに入ったのも、ギャンブルから離れさせようとする家族の企みとのこと。

おじいちゃん、俺は家族側の気持ちがよく分かるよ。

 

ギャンブルは自分の能力の範囲でおさめておこうと思う。

老人ホームには武勇伝が溢れている

最近の老人は元気だというが、本当にそうだと実感する。みんな学校に来ているみたいな感覚なのかもしれない。共同生活だしね。

 

この老人ホームで介護士として働き始めて、早いもので10年。最初は毎日のように辞めてやろうかと

思っていたが、そんな気持ちはもうない。                                                                          

 

昔は長距離トラックの運転手をしていたが、生活リズムが崩れやすいし、家族ができてもなかなか会えない。それは寂しいなと思い、介護士の資格を取った。

 

俺は物心がつく前にじいちゃんもばあちゃんも亡くなっていたから、その年代のひと達とかかわったことなんて本当になかった。

 

だから、初めて仕事を始めた時はコミュニケーションの取り方に悩んだし、10円ハゲを作らせたら日本一なんじゃないかと思えるくらいたくさん10円ハゲができた。

 

これをいじり倒して転げまわっていたやつらのことを思い出したら腹が立ってきた。今度おごらせよう。(ちなみに今でも仲は良い。こんなことで崩れる関係でもない。)

 

そんな俺がこの仕事でのやり方を確立したのは、あるおじいちゃんとの出会いがきっかけだった。

 

そのおじいちゃんは70歳くらいで、まだ元気だったが家で一人よりは良いという理由で入居してきた人だった。

 

明るい人で入居者ともすぐに打ち解けたし、家族もちょくちょく来ているようだった。そんなおじいちゃんが人気の理由は、話が面白いということだった。

 

同僚からそんな話を聞いていた時に、俺はそのおじいちゃんをお世話する仕事が入っていたので、ストレートに聞いてみた。

 

俺「○○さんのお話ってすごい面白いらしいじゃないですか。」

 

爺「そうでもないんだがなー。ただ、お前さんも同世代で昔の話をすると懐かしかったり重石よく感じることがあるだろ?あんな感じじゃないか?それに、わしらの世代は昔のことを今でいう武勇伝みたいに語りたいやつが多いし、自分の威厳を示したいのかもな。」

 

この話を聞いて俺はハッとした。今までは自分から話しかけて、話題を何か提供しなくちゃ、とばっかりして話が盛り上がらなかった昔のことを勉強してみたりもしたが、よく分からないことが多くて、知ったかになりがちだったし。

 

そうか、逆に考えて自分が聞く立場でいいのか、と。それからは気持ちがすごく軽くなった。俺にとっての魔法の言葉が出来上がった。

 

「○○さんって若い頃はどんな風だったんですか?」

 

これだけでコミュニケーションが見違えるほど円滑になった。俺はあくまで聞く側。これまでにたくさんの面白い話、すごい話、切ない話を聞いてきた。

 

このブログでは、そんないろんなおじいちゃん、おばあちゃんの話を紹介していこうと思う。

 

俺が忘れないように記録しておきたい気持ちもある。そんな感じだ。